グーグルグラスの発売中止を受けて
はじめに
年明け早々グーグルグラスの発売が中止というニュースが駆け巡り、ちょっとした騒動となりました。
発売されていたものはまだベータ版であり、日本の販売は決まっていませんでしたが、いずれタイミングを見て購入しようと考えていた方も多いのではないでしょうか?
実際、日本での発売を楽しみにしていたファンも多かったようです。
それでは、このグーグルグラスのその後はいったいどうなっていくのか、機能や経緯に触れながら考えていきたいと思います。
グーグルグラスとは
そもそもグーグルグラスも持つことで何ができるのか?
名前は知っているものの、詳しいことはよく分からないという方もいるかと思います。
グーグルグラスはGoogle社が開発したヘッドマウントディスプレイ(HMD)方式を採用したコンピュータであり、イメージとしてはメガネ型をした本体にコンピュータが内蔵されているアイテムとなります。
メガネをかけている間、つまりいつでもどこでもコンピュータにアクセスすることができることが特徴で、直接話しかける音声入力が主となりますので手を使うことなく接続することができます。
実際に利用した人の感想ではメガネよりも軽く、目の前に透明の画面が現れるような感覚だそうです。
目に映ったものを検索したり、写真に映したり、時間を確認したりと正に近未来の世界がそこにはあります。
常に視界にディスプレイが映り込みますので、慣れるまでは歩く際などに違和感を感じるとの声もありますが、次第に慣れていくようです。
メガネのサイド部分にはタッチパッドがあり、音声と併用して利用します。
その他にもカメラボタン、赤外線センサー、骨伝導スピーカーが搭載されており、赤外線センサーを利用することで、まばたきでの操作も可能です。
写真や動画撮影、Google検索、ナビ機能、時計や通話、翻訳にニュースなど、ウェブサイトへはアクセスできないものの、使い方によっては生活必需品となれる可能性を秘めていたグーグルグラスですが、発売停止となってしまった今では入手することが難しくなってしまいました。
グーグルグラスの販売実績
グーグルグラスが最初に一般発売されたのは2014年5月13日でした。
2015年1月に発売停止となりましたので、発売開始から発売停止までおよそ8ヶ月という短い期間での販売となりました。
一般販売以前にも開発者向けや、一日限定での販売はありましたが、誰でも買えるようになったのは2014年の5月からとなっています。
一日販売の端末数は公開されていませんが、すべてが昼過ぎには売り切れたそうですので、当初はいかにグーグルグラスが注目されていたのかが分かります。
その一方で開発費との兼ね合いがあり、一般発売が始まってからも1台1500ドルという高額での販売となったことから、在庫限りの販売であったにも関わらず、販売停止まで売り切れるような事態にはなっていません。
購入にはアメリカ在住であり、アメリカの住所もしくはアメリカGoogle本社で受け取る必要がありますので、このあたりも購入に歯止めがかかった理由かもしれません。
その後、アメリカに次いで6月にはイギリスでも販売が開始されています。
価格はアメリカよりも高額な1000ポンド(約17万円)での販売で、内容は同じものとなっています。
発売中止までの経緯
このように2014年から一般発売が始まったグーグルグラスですが、2015年1月、突然アメリカGoogle社から個人向けの販売を中止するという発表がされました。
その背景には、人に気付かれずカメラ撮影ができてしまうなどのプライバシーの問題もありますが、想定していた以上に販売台数が伸びず、一般向けアプリの開発をしていた企業が撤退を始めたという部分も大きかったようです。
身につけることができるウェアラブル端末市場を全体でみた場合、まだまだ今後大きな可能性を秘めています。
しかし現実的にはメガネ型の端末よりも時計型やリストバンド型の端末の方を購入したいという意見が根強くあります。
アメリカではグーグルグラスが高額であったことから、装着している人が襲われるという事件も起きており、いつでも使えることが魅力であるはずのグーグルグラスを自由に装着できないという現実も販売停止の一つの理由でしょう。
こうして1月19日をもって一般向け販売が終了し、長い試用期間は終焉を迎えることとなりました。
興味を示している人間は多かったものの、実際購入するとなると金額面や精神面でのハードルが高かったともいえます。
身につけているだけで盗撮しているのではと疑われてしまったり、強盗に遭うかもしれないと考えながらでは、せっかくの新世界であってもを楽しむことは難しいということでしょう。
グーグルグラスの未来
それではグーグルグラスの今後はどうなっていくのでしょうか?
一般販売は終了しましたが、業務利用を目指したプロジェクトは今後も続行されていきます。
購入者へのサポートも1年以内であれば修理交換に応じるとのことですが、その後については明言されていません。
現在公式アプリとして存在している100以上のアプリは引き続き公開され、新規アプリの公開申請の受け付けは続けていくそうです。
アプリ開発を行ってくれる企業があれば、次につなげるためにも積極的に受け入れたいということでしょう。
また、iPodの産みの親とも言われるGoogle社のトニー・ファデル氏が次期バージョンの開発を監督することが発表されました。
これからも開発を続けるということですから、数年後には違うバージョンのグーグルグラスが販売されるかもしれません。
しかし、グラス型だからできることを新たに考え、アプリの開発をしていかないことには未来は厳しいのではないかと思います。
スマートフォンも販売当時は決して使い勝手の良いものではありませんでしたが、WEBの閲覧など携帯電話にはない便利な機能が多くあったため、ユーザーが増え、現在のような操作性と豊富なアプリが生まれていきました。
一方のグーグルグラスでは、そのほとんどのコンテンツがスマートフォンをはじめとした他者で代替えのできるものとなっています。
この現状を打破するためには一つでも二つでも、グーグルグラスでしか成しえないアプリケーションを提供していくことが必要でしょう。
そのコンテンツがいったい何なのか、撤退していない企業にはこれからもどんどん新しいチャレンジをしていってもらいたいものです。
国内だけで考えた場合、ソニーの「Smart Eyeglass(スマートアイグラス)」や東芝の「東芝グラス」エプソンの「MOVERIO BT-200」など日本国内でもメガネ型端末の開発が盛んです。
グーグルグラスでは英語対応しかされていませんでしたので、国内企業から日本語のアプリを搭載した使い勝手の良いものが出回るようになるかもしれません。
おわりに
グーグルグラスが低迷していく一方で、アップルウォッチの評判は上々のものとなっています。
349ドルという手の届く価格帯での販売や、iPhoneとの連携などで注目を集め、このまま販売台数が伸びていけばウェアラブル市場はウォッチ一択となっていくのではと考える専門家もいます。
また、アップルウォッチではデザイン性も大きな魅力となっています。
グラス型ウェアラブル市場が今後発展していくためには、ウォッチのような違和感のないビジュアルも必要となっていくことでしょう。
厳しい世論の中で、次期バージョンへの挑戦を表明しているGoogle社。
今回の経験を糧にしていかに斬新なグーグルグラスを生み出していくのか、今後の行方にはまだまだ目が離せません。